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系統用蓄電池のビジネスモデルとファイナンスの重要性

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全国で新たな導入が進む系統用蓄電池。ビジネスとしてどのように収益を上げ、投資回収を行っているのでしょうか。今回は、系統用蓄電池のビジネスモデルと融資の考え方について詳しく見ていきましょう。

系統用蓄電池のビジネスモデル

系統用蓄電池は、電力系統に直接接続するため、充放電によるさまざまな機能を提供しやすいのが特徴です。こうした特徴から、系統用蓄電池の収益源は上図の通り、主に、「容量市場」、「需給調整市場」、「電力卸市場(スポット市場)」の3つです。蓄電池の充放電を適切にコントロールすることでこれらの市場で収益を上げ、投資を回収していくのが系統用蓄電池のビジネスモデルだと言えます。続いて、これらの3つの市場について見ていきます。

容量市場

まず、容量市場は、将来発電する能力の「供給力」を取引する市場です。4年先まで発電所などを維持することで、発電出力(kW)に対してインセンティブを獲得することができます。このインセンティブの金額は、1年に1回行われる「メインオークション」によって電力エリアごとに決定されます。

需給調整市場

需給調整市場とは、電力の需給バランスを維持するための「調整力」を取引する市場です。電力を安定供給するには周波数を常に一定に保つことが不可欠であり、調整力はそのための機能です。需給調整市場では、調整力の種類や求められるタイミングによって、5種類の商品が取引されています。

電力卸市場(スポット市場)

電力卸市場の中にはいくつかの市場がありますが、翌日に受け渡しする電力を取引する「スポット市場」が主要な市場です。スポット市場では、北海道から九州までの各エリアで、翌日に受け渡しする電力(kWh)を30分ごとに取引します。市場価格は電力需給の状況によって大きく変動します。

市場で運用収益を上げるには

系統用蓄電池がこれらの市場で収益を上げるには、基本的なことですが、まず、市場が求める要件を満たすことが大前提です。特に、需給調整市場では、商品ごとに求められる要件が異なり、もっとも要件が厳しい「一次調整力」では、周波数を蓄電池側で制御する自端制御が求められます。こうした要件を満たすには、蓄電池の頭脳であるエネルギーマネジメントシステム(EMS)の選定が重要です。

ファイナンスの重要性

系統用蓄電池事業は、高圧の2MW/8MWh規模で6億円にのぼるなど、莫大な資金が必要になります。こうした資金を自社で準備できるケースは少なく、コーポレートファイナンスやプロジェクトファイナンスを組んで融資を受けることが一般的です。

融資を受けるには、金融機関から「投資回収が見込める事業だ」と判断されることが重要です。しかし、系統用蓄電池事業は前述した通り、市場での運用益が収益の柱になっています。市場には常に変動のリスクが伴います。また、これらの市場は国の制度と深く関わっていることから、将来、制度が変更される可能性もあります。

こうした見通しを立てにくいリスクがある中で融資を勝ち取るには、確実に運用収益を上げ、投資回収ができるという信頼性が重要になります。この先、系統用蓄電池ビジネスの実績が増え、ファイナンスの面でも信頼性の高いビジネスに成長していくことを期待しています。