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長期脱炭素電源オークションとは? 市場収益の還付ルールを見直しへ

再生可能エネルギーや蓄電池などの脱炭素電源の新設・更新を支援する「長期脱炭素電源オークション」が昨年度から開始されました。どのような制度なのか、わかりやすく解説します。また、ルールの見直しの動向についてもリポートします。

脱炭素電源の固定費をオークションで回収

(長期脱炭素電源オークションの概要。出典:経済産業省)

長期脱炭素電源オークションとは、カーボンニュートラルの実現に向けて、脱炭素電源への新たな投資を促すために行われる国の入札制度です。対象となる電源は、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー、蓄電池、水素、原子力の他、既存の火力発電所に水素やアンモニアなどを混焼する更新なども含まれています。こうした電源の固定費の相当額を入札で決定し、落札した電源には20年間にわたって固定費相当額が支払われます。

オークションはこれまでに2回実施され、2024年1月の第1回目では977万kW、2025年1月の第2回では635万kWが落札されました。第2回入札では、特に「蓄電池・揚水」への応札が多く、募集容量150万kWに対して、5倍超にあたる約750万kWの応札がありました。

こうした制度が始まった背景には、既存の発電所への新規投資が停滞し、発電事業からの撤退などによって、今後、発電する能力そのものが低下するのではないかという懸念があります。発電する能力を「供給力」といいますが、供給力が下がれば、電力需給のひっ迫、電力価格の高騰などが発生し、社会に多大な影響が及びます。そのため、長期脱炭素電源オークションによって発電所の新設・更新への投資を促進することを目的としています。

事業者の工夫で収益を確保できる仕組みに

その一方で、発電所を開発する立場から考えると、長期脱炭素電源オークションを通じて回収できるのは固定費のみです。発電所を運営するには、燃料費やオペレーション、保守点検といった変動費も必要になります。こうした変動費を回収するには、発電所で作った電気を販売したり、出力のコントロールなどによって新たな価値を生み出したりして、対価を得なければなりません。そうした場合に想定されるのが、電力卸市場、需給調整市場、容量市場といった他市場での運用利益です。

しかし、現在、長期脱炭素電源オークションで落札した電源は、こうした他市場での運用収益の9割を国へ還付するルールとなっています。そのため、発電事業者に残るのは他市場収益の1割であり、実質的には変動費の回収にハードルが残されていました。

そこで、経済産業省・資源エネルギー庁は6月23日、今後の長期脱炭素電源オークションに向けて、投資回収をめぐるルール変更の考えを示しました。他市場収益の9割を一律に還付する現行の仕組みの他に、事業者の創意工夫次第で収益を確保できる仕組みを設ける案です。

こうしたルールの見直しは、詳細の検討を詰めた上で、第4回オークション以降に適用されると見られます。見直しの内容を含めて、今後も制度の動向を注視していきます。

(参考:第104回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 制度検討作業部会:経済産業省)