資源エネルギー庁は、太陽光発電所を長期的に運営する事業者を「長期安定適格太陽光事業者」として認定し、全国の発電所を数十社に集約する案を示しました。FIT・FIPの買取期間が終了した発電所を事業継続するための案です。「適格事業者」の要件と優遇策をリポートします。
再投資できる事業者を「適格事業者」として認定
経済産業省・資源エネルギー庁が提案した「長期安定適格太陽光事業者」とは、固定価格買取(FIT)・FIP制度の期間が満了した発電所を長期にわたって運営する事業者を、国が認証する制度の案です。
背景には、発電所への適切な再投資を促す狙いがあります。低圧の発電所は数が多く、オーナーもさまざまです。そのため、買取期間が終わって売電収入がなくなると、適切に管理されない発電所が現れるのではないかと懸念されています。
実際に、2032〜2036年には、全国で約2,900万kW、約47万件の発電所で、FIT・FIPの買取期間が満了する見通しです。こうした膨大な数の発電所が適切に運用されずにいると、地域でのトラブルの原因となりかねません。小規模とはいえ発電所であることには変わりなく、ルールを守り、安全に運用することがもっとも大切です。
そのため、国は、再投資や適切な運用が見込める事業者を認定することで、発電所を集約していきたいとしています。
「適格事業者」の要件と優遇策とは
「適格事業者」になるための認定要件としては、次の3案が挙げられています。1つ目は、「地域の信頼を得られる責任ある主体であること」、2つ目は「長期安定的な事業の実施が見込まれること」、3つ目は「FIT/FIP制度によらない事業実施が可能であること」です。
このうち、3つ目の「FIT/FIPによらない事業実施が可能であること」という条件に関しては、2017年度以降に競争的な環境で営む太陽光発電事業の実績が5万kW以上あることが求められる見通しです。このことから、大規模な実績のある事業者が「適格事業者」に認定されることになるでしょう。
一方で、「適格事業者」への優遇策としては、「FIT/FIP変更認定時の説明会等の取扱い」が緩和されること、「電気主任技術者に係る統括制度の利用拡大」、「パネル増設時における廃棄等費用の積立時期の取扱い」、「事業売却希望者情報の先行公開」が提案されました。
電気主任技術者の統括制度とは、同一の組織に所属する統括電気主任技術者が、現地に派遣する担当技術者を適切に管理する場合に、1人の統括電気主任技術者で6ヶ所までの再エネ発電設備を管理できる制度です。
今回の案では、適格事業者やそのグループ会社が管理する発電所であれば、統括制度の対象としやすくする考えが示されました。資源エネルギー庁は、2025年春にもこの仕組みを導入したいとしています。これらの案が今後どのように具体化していくのか、引き続き注目していきます。