国は、屋根などに設置する中小規模の太陽光発電に関して、期間を限定して買取単価を増額する新たな制度を検討しています。この「初期投資支援スキーム」について、現時点でわかっていることを解説します。
初期投資支援スキームとは
初期投資支援スキームのイメージ。(出典:資源エネルギー庁)
「初期投資支援スキーム」とは、住宅・事業用の屋根置き太陽光発電の買取価格を、期間を限定して増額する仕組みです。国は、FIT(固定価格買取)制度の中に、新たにこのスキームを設けることを検討しています。
従来のFIT制度では、固定単価で10年(住宅用)、または20年(事業用)にわたって発電量を買い取る仕組みでした。しかし、住宅や小規模な事業用太陽光発電をめぐっては、設置者が個人や中小企業であるため、財務的な体力がそれほど大きくないケースがあります。その場合、投資回収期間が長いことが、太陽光を導入する際のハードルになっていると考えられます。
そこで、国は、増額した単価で短期間の買取を行い、個人や中小企業が太陽光発電のコストを回収しやすくするために、初期投資支援スキームを検討しています。
事業用と住宅用とで異なるスキームを検討
「階段型の価格設定」スキームと「支援期間の短縮」スキームのイメージ。(出典:資源エネルギー庁)
初期投資支援スキームでは、FIT買取を初めて数年間、買取価格を従来の単価の数倍にすることを検討しています。これによって、初期の期間を投資回収をしやすくすることが狙いです。昨年12月17日に開催された経済産業省・資源エネルギー庁の第100回調達価格等算定委員会では、事業用と住宅用のそれぞれについて、買取価格案の試算が公表されました。
それによると、事業用太陽光(屋根設置)では、初期と後期の2つの支援期間を設定し、初期の価格を高く、後期の価格を低くする「階段型の価格設定」のスキームをとるとしました。また、住宅用太陽光では、支援期間そのものを短縮することで、買取価格を高くする「支援期間の短縮」スキームを提案しました。
これらを踏まえて、事業用太陽光では、初期投資支援期間が5年間、初期投資支援価格が1kWhあたり19円程度、住宅用太陽光では、初期投資支援期間が4年間、初期投資支援価格が同24円程度と算定されました。
初期投資支援スキームは26年度からの予定
初期投資支援スキームは、2026年度から新たに設けられる見通しです。これまでのFIT制度と整合性をとるために、国ではいくつかの論点について整理をするとしています。その1つが、法制上の整理です。現行のFIT制度では、法定耐用年数を基礎として買取期間が設定されています。住宅用太陽光発電の法定耐用年数は17年間であり、新たな初期投資支援スキームではこれより大幅に短い支援期間を予定しています。これをどのように解釈するかが1つのポイントになります。
また、初期投資支援スキームが26年度からスタートすることで、25年度に太陽光発電を導入することを先延ばしにケースが増加すると見られています。太陽光発電の導入が遅れることで、国全体の再エネ導入量が伸び悩む可能性も考えられます。こうした事態を招かないように、どのように対処すべきかも今後の検討課題とされています。