経済産業省は、事故報告の対象に、これまで対象外とされていた発電所に併設する蓄電池などを新たに追加する案を示しています。また、蓄電池の事故防止のための措置を義務付けることも検討しています。蓄電池ビジネスに携わる事業者は、今後の検討動向に注意が必要です。
電気火災のため消火が難航
今年3月、鹿児島県伊佐市にある蓄電池併設の太陽光発電所(発電出力1000kW・蓄電容量6400kWh)で、蓄電池やPCSの入った建屋が燃え、爆発が起きました。リチウムイオン蓄電池設備が爆発・全焼し、消防隊員4名が負傷する事故となりました。
消火活動は、事故が発生した18時過ぎから、翌日の14時半ごろまで行われました。消火に20時間以上かかった理由として、電気火災であったことが挙げられています。電気火災では、電気を遮断しないまま放水すると、感電の危険性があります。そのため、消火活動が難航したとされています。
蓄電池ラックの損傷がもっとも激しいため、蓄電池から出火した可能性が高いと考えられています。
蓄電池の保安強化を図る動きが高まる
この事故を受けて、経済産業省は4月、発電所に蓄電池を併設する場合、保安を徹底することとして注意を喚起しました。設置者や電気主任技術者に対して、改めて、日常点検や定期点検の項目を抜け漏れなく実施すること、交換が必要な部品は、必ず交換することなどを求めました。(参考:経済産業省『発電所等に施設される蓄電池設備の保安確保の徹底について』)
また、総務省・消防庁も、電気火災が発生したら、速やかに電気を遮断して感電を防ぐことや、施設内には必ず複数人で立ち入り、呼吸保護具や命綱などの保護具を装着して消防隊員の安全を守ることなど、留意事項を定めています。(参考:総務省・消防庁『電気施設等における警防活動時等の留意事項について』)
蓄電池の「事故報告」の対象を拡大へ
さらに、太陽光発電所に併設される蓄電池は現在、電気事業法の「事故報告」の対象外ですが、新たに対象に含める案を示しました。また、蓄電池のみで構成される蓄電所(系統用蓄電池など)についても、「事故報告」の対象となる規模を拡大する考えを打ち出しています。現在は、容量8万kWh以上、または、出力1万kWh以上の蓄電池が対象ですが、これを引き下げるとしています。
あわせて、電気事業法における蓄電池の技術基準を明確にして、事故防止に有効な措置を義務化することも検討するとしています。
蓄電池の保安や事故防止に関する対応が強化されることから、関係する事業者は引き続き注目する必要があります。
(参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/denki_setsubi/pdf/021_03_00.pdf
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