株式会社後藤電気 | キュービクルや高圧・特高設備の点検・工事

電気主任技術者の人材不足、実務経験の短縮など対策が進む

工場や事業場の電気保安を行う電気主任技術者は、安全に電気を使用する上で欠かせない存在です。しかし、今、そんな電気主任技術者の人材不足が深刻化しています。対策として、国は電気主任技術者になるための要件緩和に取り組んでいます。どのような対策が行われているのか、解説します。

深刻化する電気主任技術者の人材不足

電気工作物が増加する一方で、高齢化や新規の入職者数が減少していることから、電気保安に従事する人材の不足が深刻化しています。国は、2030年には、50kV未満の電気工作物の保安ができる第3種電気主任技術者だけで約2000人が不足すると予想しています。さらに、50kV以上の保安ができる第1種・第2種電気主任技術者まで含めると、人材不足の影響は相当大きなものになるでしょう。

(電気主任技術者免状取得者数の変化。出典:経済産業省

電気主任技術者の免状を取得した人数について、直近10年間とその前の10年間で比較すると、上図の通りです。特に、第3種電気主任技術者の取得者数が約1割に上る5000人以上減少しています。

また、電気主任技術者を選任する形態としては、約9割の事業者が外部へ委託しているにも関わらず、外部委託の従事者は50歳以上が過半数を占めているのが現状です。

講習の受講で実務経験年数の短縮が可能に

そのため、国は、電気主任技術者の資格を得るための要件を緩和しました。これまで、電気主任技術者になるには免状が必要であり、保安管理業務の外部委託を受けるには、1種では3年、2種では4年、3種では5年の実務経歴を有することが条件でした。

(免状取得後、外部委託従事に当たり必要な実務経験年数。出典:経済産業省

しかし、2021年に「保安管理業務講習」という制度が創設され、講習を受講すれば、こうした実務経験年数を短縮できるようになりました。これによって、1種では現行通りの3年間の実務経験が必要ですが、2種と3種では、研修を受講すれば1〜2年減とすることが認められました。

なお、保安管理業務講習は、電気基礎や関係法令、各種設備の概要、点検方法などについて合計29時間の授業が行われることになっています。受講者は通常、4〜5日かけて一連の講習を受ける必要があります。

スマート保安など、電気保安の効率化が必須

国は、実務経験年数を短縮する他にも、電気保安のスマート化、デジタル化などを通じて人材不足という課題を解決するとしています。また、現状では、外部委託を受けることができる数は、設備ごとの換算値が33点以内であることが条件にされていますが、この条件に関しても運用を柔軟にすることが必要ではないかという議論も上がっています。

さらに、担当する事業場へ2時間以内に到達する、いわゆる「2時間ルール」についても、特別な事情がある場合には運用を柔軟化すべきではないかという意見もあります。例外としては、海上に設置される洋上風力発電所などが対象になると思われます。

電気保安は、電気を安全に使うために欠かせないものです。社会の状況に合わせて見直すべきところは見直しつつ、同時に、安全性が損なわれないような配慮も必要だと考えます。

コメントする