2024年5月使用分から、国が行っていた電気・都市ガス料金への補助制度が終了します。これによって、6月からの電気料金の値上がりが懸念されています。しかし、電気料金が値上がりする原因は、補助金の他にもあることをご存知でしょうか?2024年度からの電気料金が、これまでとどのように変わったのか、わかりやすく解説します。
電気料金の仕組み
そもそも、電気料金は、大きく分けて「基本料金」「従量料金(電力量料金)」「燃料費・市場価格調整額」「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」の4つで構成されています。
このうち、基本料金と従量料金は、電力メニューごとに単価が決められていて、メニューの改訂がない限り、固定の単価が適用されます。
一方で、燃料費・市場価格調整額は、毎月単価が変動するのが特徴です。というのも、これらは、石油などの燃料価格の変動や、電気の卸市場価格の毎月の値動きを電気料金に反映するために設けられたものだからです。
また、再エネ賦課金は、1年ごとに単価が見直しされるルールになっています。再エネ賦課金は、国が太陽光発電などの再生可能エネルギーを買い取る固定価格買取(FIT)制度の原資となっているものです。そのため、買取量の変動などを反映して、毎年単価の見直しが行われています。
2024年度からの電気料金、何が変わった?
実は、2024年度から、国の制度が見直しされたことなどによって、電気料金にさまざまな変更が加わっています。九州電力のケースをもとに解説します。
①従量料金単価の値上がり
2024年4月から、九州電力の高圧以上の標準メニューにおける従量料金単価が変更されました。具体的には、燃料費調整の見直しを行ったことに伴って、電気料金単価が引き上げられています。また、新たに、国の発電側課金という仕組みが導入されたことも値上げの原因となっています。
発電側課金とは、電気を送るための送配電ネットワークの維持管理コストを反映したものです。これまで、送配電網の維持管理コストは、小売電気事業者を通じて需要家がすべて負担していました。しかし、発電側課金制度の導入によって、送配電網の維持管理コストの約1割を発電事業者が負担することになりました。このように、全体の仕組みが見直しされたことによって、電気料金の改訂が行われることになったのです。
(参考:九州電力株式会社 プレスリリース)
②再エネ賦課金単価の値上がり
また、再エネ賦課金単価も昨年度と比べて大幅な値上がりとなりました。2023年度の賦課金単価は1kWhあたり1.40円でしたが、2024年度は3.49円となっています。2倍以上の値上がりになったのは、過去に類を見ないことですが、そもそも、昨年度の賦課金が例年になく安かったという背景があります。これまでの賦課金単価の推移を下表で示します。
(再エネ賦課金単価の推移。出典:資源エネルギー庁より筆者作成)
昨年度の単価が安かった理由として、賦課金を算出する際に、FITなどの買取価格から控除される費用が大きかったことが挙げられます。これは、卸市場価格が高騰したことが原因です。今年度は、控除額が例年並みに戻ったため、賦課金単価も元の水準に戻ったと考えられます。
(参考:資源エネルギー庁)
③国による補助金の終了
近年、不安定な世界情勢を受けて、燃料価格が世界的に高騰しています。これを受けて、エネルギーの8割以上を海外からの輸入に頼っている日本でも、国内の電気・ガス料金などが上がっています。
そのため、国は、2023年1月から「電気・ガス価格激変緩和対策事業」として、高圧の電気料金1kWhにつき1.8円(2024年5月使用分は0.9円)などの補助を行っていました。この補助は、2024年5月使用分までで終了するため、6月以降の電気・ガス料金が値上がりするとされています。
(参考:電気・ガス価格激変緩和対策事業)
適切な電気設備の利用と省エネが重要
電気料金が値上がりしていることから、コストの削減の重要性がさらに高まっています。電気料金を抑えるには、まず、電力デマンドが契約電力を超過しないようにコントロールすることが大切です。高圧の電気料金では、30分間という短い間の電力デマンドの実績によって、1年間の基本料金が決定します。デマンドのピークカットやピークシフトを行うことで、契約電力が上がるのを抑え、基本料金の上昇を防ぐことができます。
次に、電気の使用量を抑える省エネも、電気料金の削減に有効です。設備の運用ルールや習慣の見直しによって、コストをかけなくても省エネできる場合もあります。また、夏場や冬場の冷暖房にあたっては、窓などの開口部の断熱を行い、冷暖房の効率をアップすることも大切です。